東京タワー。 母の一句。
2006年 10月 02日
母に一生に一度のお願いをした。
「お母さん、お願いだから私が香港にいるうちに一度遊びに来て。」
私は香港で仕事を始めてからもう12年。
「お父さんがまだそんな時期じゃないから・・・。」
そう言っていつも母には断られていた。
今年母が身体をこわして、
「そんなこといってたら、いつまでたっても来れないじゃない。今回は、私も東京出張でお母さんと一緒の便で香港に行けるし、帰りも私の便で連れて帰ってあげられるめったにないいいチャンスだから、思いきっておいでよ!」
そういって、やっと決心がついた母がまずは出張先の東京にやってきた。
私が滞在しているホテルは、東京タワーがすぐ目の前にあるホテル。
母と二人きりになるのは、私が母のお腹の中にいた時以来だから、この36年間で初めてなんじゃないかと思う。
東京でひと仕事を終えて、母と泊まった東京での一夜。
母は、窓から見上げた東京タワーを見ながら、
「ヨシカちゃん・・・・明日は香港だね・・・。」
母は、海外旅行なんてこのかた62歳になるまでしたこともなく、
国内旅行でさえしたことがない。
家族旅行なんてもちろんない。
父が19歳、母が20歳で出会って学生結婚をし、25歳で私を産んでから、
彼女は一度も自分のために自分の時間を使ったことなんてない。がむしゃらに家を守り、
二人の娘を育ててきた、いわゆる典型的な日本の母。
東京タワーを酒の肴にビールで乾杯する母と娘。
翌朝、私はあるメモを目にした。ホテルが宿泊客に俳句の募集をしていたらしい。
「一房の葡萄を食みつつ語る宿。」
「夢のよう娘と二人秋晴の旅。」
窓よりの東京タワーの感激は、私の一番のゴウカな宝石。
これからの人生に輝きを放ち続けることでしょう。
今日は香港へ出発。
私が12年間生活してきた香港。
母に最高の楽しい思い出をつくってあげたいと、
本気で親孝行というものができたらいいなと思った。
by dragonsommelier
| 2006-10-02 01:45
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